
岐阜県と長野県にまたがり、3,000メートル級の山々がそびえる穂高連峰。そのふもとにある上高地には、雪解け水でできた清流、梓川(あずさがわ)が流れます。上高地は荒々しい山々とは対照的に、山あいにある細長い平地。そのため、特別な装備なしでも気軽にハイキングを楽しめるのが特徴です。実際にどんな場所なのか、今回は上高地へのアクセスや、服装、おすすめの散策コースまで詳しくご紹介します!
直接行けない!自家用車で上高地へ行くには?

上高地は美しい自然を守るため、パーク&ライド方式を採用しています。直接上高地に行けるのはバスかタクシーのみ。自家用車で行く場合は、近くの駐車場に車を止め、そこからシャトルバスで上高地へ向かいます。岐阜県側は平湯にある「あかんだな駐車場」を、長野県側は「沢渡(さわんど)駐車場」を利用してください。

それぞれの駐車場でバスチケットを購入。乗車する際に入り口で渡します。バスは大型の観光タイプですが、混雑する時間帯には満席になることも。その場合は次の便を待つ必要があります。バスは約30分に一本。上高地からの最終便は季節によって、17時台や18時台です。日帰りの場合は帰りの時間にも気をつけましょう。
あかんだな駐車場
- 住所
- 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯791-38
- 駐車料金
- 1日600円(850台収容可能)
- シャトルバス料金
- 往復2,800円/片道1,500円/小人往復1,400円
- タクシー料金
- 片道5,200円+安房トンネル通行料1,580円
さわんど駐車場
- 住所
- 長野県松本市安曇4466
- 駐車料金
- 1日700円(2,000台収容可能)
- シャトルバス料金
- 往復2,050円/片道1,250円/小人往復1,030円
- タクシー料金
- 片道4,200円
電車、バス利用で上高地へ行く場合

東京からは新宿駅発の特急あずさが便利。約2時間40分で松本駅に到着です。松本駅で松本電鉄に乗り換え、新島々駅まで約30分。新島々駅からは、上高地行きのアルピコ交通バスに乗り約1時間で上高地に着きます(新島々~上高地のバス片道3,000円。2025年4月13日現在)。バスは便指定の予約制なので、事前に予約を済ませておきましょう。
山であることを忘れずに!上高地での服装

上高地は気軽にハイキングを楽しめますが、山という意識を忘れずにもちましょう。寒暖差の激しい春と秋は、風を通さない上着を忘れずに!朝晩や天候の悪化で急に冷え込むので、脱ぎ着しやすい服装を心がけてください。暑い夏は半袖か、薄めの長袖が便利です。また、春~秋を通して、帽子の利用がおすすめ。標高が高い分紫外線が強いので、紫外線対策も必要です。

靴は履き慣れたスニーカーでも歩けますが、登山靴があれば足への負担を軽減できます。上高地では木道も多く、傘ではすれ違いもしづらいため、雨具は傘ではなく、レインコートを利用しましょう。また、カバンは両手の空くリュックサックが便利です。登山用の装備は必要ないですが、しっかりと服装を整えることで、より快適にハイキングを楽しめます。
上高地の中心にあるビュースポット「河童橋」

上高地を訪れたら外せないのが、一番のビュースポットである河童橋です。上高地バスターミナルから川沿いに徒歩約5分。吊り橋が最初にかけられたのは1910(明治43)年、現在あるのは1997(平成9)年にかけられた5代目です。

河童橋からは雄大な穂高連峰を正面に、足元には梓川の絶景が眺められます。また河童橋やバスターミナル周辺には多くのホテルやレストラン、売店が並び、最も賑わうエリアです。
「河童橋~大正池」散策ルートは上高地の定番

上高地にはいくつかの散策ルートがありますが、河童橋~大正池、河童橋~明神池を歩くのが定番人気のルートです。
まずは片道約4キロメートルの河童橋から大正池に向かうルートをご紹介します。河童橋を出ると、しばらく整地された道が続き、緑に囲まれ、鳥の声がたくさん聞こえてきます。

河童橋から徒歩約15分。上高地ルミエスタホテルの横に、イギリス人宣教師ウォルター・ウェストンの記念碑「ウェストン碑」があります。イギリス人宣教師ウォルター・ウェストンの記念碑です。彼は日本各地の山に登り『日本アルプスの登山と探検』という本で、世界に日本の山について伝えました。また日本人にも、修行や狩りではなく、趣味として山を楽しむことを伝え「日本近代登山の父」としても知られています。

さらに歩くこと約5分、田代橋を渡ります。途中木々に隠れて見えなくなっていた穂高連峰を、ここで再び見ることができます。

田代橋を過ぎると林の中を歩く「林間コース」と、梓川沿いが多い「梓川コース」に分かれます。どちらも合流するのでお好きな方へ。今回は梓川沿いを選びました。川沿いの木道はとても清々しく気持ちよく歩けます。

田代橋から約20分歩くと田代湿原に到着。さらに1分程進むと小さな田代池もあります。ここは湿原ごしに穂高連峰を一望できるビューポイント。ベンチもあるので、絶景を眺めながら休憩できます。

さらに20分程歩いて大正池に到着。大正池は1915(大正4)年の焼岳の噴火により、梓川がせき止められてできました。大正池といえば立ち枯れた木が有名ですが、年月を経てその数はだいぶ減っています。

こちらは視点を変えて焼岳と大正池。少しですが立ち枯れの木が見えます。河童橋から大正池まで約1時間で歩くことができました。区間は、木道と整地された道が半々ぐらいで、どちらも平坦でとても歩きやすい道です。1時間程度の道のりではありますが、飲み物を忘れずに持ち、水分補給をしっかり行いましょう。河童橋付近にて、あらかじめ飲料を購入するのがおすすめです。

大正池はシャトルバスが通る道路に面しています。シャトルバスに乗って河童橋へ戻れますし、もちろん、来た道を歩いて河童橋に戻ることもできます。また、バスに乗って平湯温泉など上高地の外に出ることも。
河童橋~大正池コースの片道だけ歩きたい方は、上高地へ行くときのシャトルバスを大正池で降りる、という方法もあります。そこから河童橋まで歩くと、徐々に近づいてくる穂高連峰を眺めながら散策できます。
満天の星空を眺める「星降る夜空の鑑賞会」

国立公園内にある上高地は、街灯がなく、星空がきれいに見えるのも魅力のひとつ。大正池の目の前に位置する「上高地 大正池ホテル」では、毎月4日ほど、宿泊者限定で星空を眺めるイベント「星降る夜空の鑑賞会」を開催しています。
星空案内のスペシャリスト「星のおねえさん」による今夜の空についての案内を聞きながら、満天の星空を眺める時間は格別。まるで映画やアニメの世界に入り込んだような、美しい光景を堪能しましょう。雨の日には、館内で星の話を聞くことができます。
上高地 大正池ホテル
- 住所
- 長野県松本市安曇上高地
- 星降る夜空の鑑賞会
- (2025年)5月11・12・21・22日、6月10・11・29・30日、7月8・9・28・29日、8月6・7・26・27日、9月7・8・21・22日、10月5・6・16・17日
鏡のようなきれいな池・明神池を目指すもうひとつの定番コース

次にもうひとつの定番、片道2.5キロメートルの河童橋から明神池を目指すコースへ。道は梓川にそって両岸にあります。行きはバスターミナル側を河童橋を渡らずに進むことにしました。川を左に見ながら進みます。

看板が出ているので、これを目印にすると、どのくらい歩いてきたか分かります。

たくさんの人々に踏み固められたとても歩きやすい道です。ほぼ平坦で、少しだけゆるやかな坂があります。大正池ルートとは異なり、梓川から離れた林道が中心です。

河童橋から約50分。山小屋明神館が見えてきました。ここを左へ折れます。

すると白くて可憐な花が一面に咲いていました。取材時5月に咲く春の花で、ニリンソウです。季節によって花は変わりますが、花を楽しむのもハイキングの醍醐味です。

梓川にかかる明神橋を渡ります。明神池まであと少し。橋を渡り切ったら、案内看板に沿って左へ。するとすぐ右側に鳥居が見えてきます。

明神池は穂高神社奥宮の境内にあります。この鳥居を進み、池の入り口で拝観料を支払い、神域にある明神池へ。

明神池はかつて鏡池とも呼ばれていたそうで、まさに鏡のようにきれいな池です。つき出た桟橋の先では、参拝することができます。針葉樹に囲まれた池の上での参拝は、とても清々しい気持ちになりました。
穂高神社奥宮
- 住所
- 長野県松本市安曇上高地
- アクセス
- 河童橋から徒歩約1時間
- 拝観料
- 500円

帰りは行きと反対の岸から河童橋へ戻ることに。明神池から五千尺ロッジを目指す川の北側の道です。梓川を左に見ながら歩きますが、写真のように細かく枝分かれした支流にかかる木道を多く越えていきます。行きよりも水辺に近く、土の道よりも木道が多いのが印象的です。
行きは明神池まで約60分、帰りも約60分の道のりです。途中の山小屋で飲み物の購入は可能ですが、あらかじめ準備をしていきましょう。
上高地ルミエスタホテルで天然温泉に浸かる

上高地にあるいくつかのホテルの中で、立ち寄り温泉があるホテルが2施設あります。そのうちのひとつが、ウェストン碑の近くにある「上高地ルミエスタホテル」。山の中にあるとは思えないきれいなホテルで、日帰り入浴だけでなく宿泊もおすすめです。


脱衣所にはフェイスタオルが設置されているので、タオル持参の必要がありません。清潔な浴室には、内風呂と露天風呂がひとつずつ。お湯はぜいたくな源泉かけ流し。なめらかでやわらかく、肌触りの良いお湯です。温泉に入れば、たくさん歩いて重くなった足もいっきに軽くなりそうです。

お風呂を出ると男女共通の湯上り処「スパリビング」があります。マッサージチェアは無料で利用可能。窓の外の緑を眺めながら、気持ちよくリラックスできます。
上高地ルミエスタホテル
- 住所
- 長野県松本市安曇4469-1
- 日帰り入浴
- 11:00~13:00(12:30最終受付)
- 入浴料
- 大人 2,220円、小人(12歳まで) 1,100円
おいしくてボリューム満点!メニューも豊富な「小梨平食堂」

上高地には、河童橋を中心にレストランやテイクアウトのお店がたくさんあります。高級ホテルで食べるコース料理から、山小屋ならではの食事まで多種多様です。
そんな中で、たくさん歩いたのでお腹いっぱい食べたい!という方におすすめなのが「小梨平食堂」。河童橋から徒歩約5分、小梨平キャンプ場にある食堂です。写真は山賊カレースパゲッティ(1,500円)。カレースパゲッティの上に山賊焼きが乗ってボリューム満点!パスタとカレーが絶妙に合う上に、サクサクでジューシーな山賊焼きがとてもおいしく、お腹が満たされます。

窓からは穂高連峰や梓川が見え、景色も抜群!他にもうどん、そば、カレー、おでん定食など、さまざまなメニューがあります。併設の売店ではオリジナルのトートバッグから、スナックや菓子パン類、ドリンクまで豊富に販売しています。
小梨平食堂
- 住所
- 長野県松本市安曇上高地4468
- 営業時間
- 7:00~14:00(ランチは10:00~。ラストオーダー13:40)
16:00~18:00(ラストオーダー17:20)
上高地の名物チーズケーキ「Sweets cafe & Bar LOUNGE」

甘いものが食べたくなったら、上高地名物のレア・チーズケーキ(850円)がおすすめ。五千尺ホテル1階「Sweets cafe & Bar LOUNGE」で食べられます。濃厚なのに上品な甘さで、酸味のあるブルーベリージャムと良く合います。他にも信州産ふじりんごのアップルパイ(950円)も人気です。

賑やかな河童橋の前にもかかわらず、一歩足を踏み入れると重厚で落ち着いた雰囲気の「五千尺ホテル上高地」。外の自然を眺めながら落ち着いたティータイムを楽しめますよ。
五千尺ホテル Sweets cafe & Bar LOUNGE
- 住所
- 長野県松本市上高地4468
- 営業時間
- 10:00~16:00
近隣にも立ち寄りスポットが多数!

上高地は、近隣にさまざまな立ち寄りスポットが点在しています。乳白色でなめらかな肌触りの弱酸性の温泉を楽しめる「白骨温泉」には直通バスで約35分ほど。
白骨温泉
- 住所
- 長野県松本市安曇4197-16(白骨観光案内所)

バスターミナルや足湯が整備され、「北アルプス山岳観光の玄関口」として知られる「さわんど温泉」には、バスで約30分ほどで向かえます。
さわんど温泉
- 住所
- 長野県松本市安曇沢渡4466-52(沢渡バスターミナル)

また、トレッキングコースが整備されている「乗鞍(のりくら)高原」には、直通バスで約60分ほどで到着。いずれもバスが運行しているので訪れやすく、気になるスポットを見つけて合わせて立ち寄るのもおすすめです。
乗鞍高原
- 住所
- 長野県松本市安曇鈴蘭
自然豊かな上高地を満喫しよう

上高地の近くにはほかにも、ロープウェイで2,156メートルまで登れる「新穂高ロープウェイ」などのスポットから、「平湯温泉」、「奥飛騨温泉郷」などの人気の温泉まで、立ち寄りたい場所が豊富です。宿泊して周辺観光もしてみてはいかがでしょうか。
取材・撮影・文/まのあつこ
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご利用の際は公式ホームページなどでご確認ください。